インパール作戦に学ぶ組織の力

小説「わたし、定時で帰ります」朱野帰子著は、吉高由里子主演のテレビドラマの原作本。IT系WEB制作会社を舞台に無謀な仕事を受注した無能上司に現場が振り回される物語。その小説の中、無謀な仕事に絡め揶揄する形で地上最悪の作戦としてインパール作戦やジンギスカン作戦の話が出てきます。このインパール作戦、俄然、興味が湧きました。


1944年、日本陸軍はインド北部のインパールを制圧すべき、隣のビルマから山岳地帯のジャングルを抜け、インパールを目指す。これがインパール作戦。1941年に真珠湾攻撃を仕掛け太平洋戦争が勃発。1945年に終戦したので、その一年前。この作戦、東京から岐阜あたりまでの距離をずっと山岳地帯のジャングルを抜ける過酷な道のり。調べていると、その作戦の指揮官、牟田口廉也の愚将っぷりが出るは出るは。食糧やら物資の供給がジャングルや兵員の絡みで後方支援が出来ない。で、馬や牛を同行させて、それを食糧にしましょうというのがジンギスカン作戦と呼ばれているらしい・・。輸送トラックは、途中走れる道が無くなると分解して運び上げたとか。その牛や馬は、過酷な道中で息絶えてしまう。物資、食料がない、助けてくれという軍隊からの支援要請には、「気がたるんどる」という精神論で返したとか・・。小説の中では、無謀な仕事を受注し疲労困憊の社員に、畳み掛けるように難題を押し付ける無能な上司の仕事っぷりに重ね合わせてましたが、これどこの組織でも似たような状況ってあるんじゃないかと。政界でもアベノマスクやら、給付金の配分方法、またコロナ対策、コンピュータを使えないサイバー担当大臣任命など、なんでこうなるの?という不思議な事が、偉い方々の中でもまかり通ってます。インパール作戦も、無謀だとの声は多かったようです。そりゃそうだ。でも作戦は実行された。 今の政界同様、関係者の利害関係やらメンツが決定に深く関わっていたとのこと。知るとアホらしくなるものの、こういうことは、今だに身近なところでも普通に起こってるんじゃないかな。笑い飛ばせる程度のことなら、いざ知らず。人命に関わることに及んでもそうなるんですから、影響の大小は関係ないのかもしれません。このインパール作戦では、3万人の死亡、4.2万人が戦病死したとのこと。この作戦の決定には、牟田口蓮也の組織力学を利用する巧みさや強引さが、あったようです。この方は、その後、陸軍予科士官学校長になったり、終戦後は自己弁護を繰り返し責任を転嫁をしたそうですから、まぁこういう人も、どこにでもいると思うし。太平洋戦争の引き金である真珠湾攻撃も、背景には海軍と陸軍のメンツが絡んでると言われてますから、この方だけが特別では無いんでしょうが・・。

さて時代に学ぶとすれば、なぜこういう人が組織の頭に立ってしまうのか?という部分と、その被害者になった場合にどうするか?を考えないといけない。任命者が既得権益やら利害関係を考えてしまう人間である以上、こんな人選をする可能性は減らせても無くすことは無理だろうと思います。長い目で見た場合、長く続かないということは歴史が教えてくれてます。でも短い間であろうと被害者は出ます。ではその被害者になった場合に、どうすべきか?結論から言うといろんな選択肢を持って置くことだと思います。そのための準備を常にしておくこと。戦うという選択肢が取れる勇敢な人は、それで良いと思う。でも殆どは「受け入れる」なんでしょう。インパール作戦で亡くなられた方は、それしか選択肢がなかったんだと思う、そんな時代だったんでしょう。でも今の時代なら、そこから「逃げる」事が出来る自分の環境を作っておくことなのかなと。逃げた後に、どうするかの選択肢を持っておく事。それが許される世の中にしなきゃならないんだろうと思います。
とまぁこんな事が言えるのは、自分が当事者じゃないからかな。でもそうなった時に、客観的に判断出来るようになっていたいとは思います。
これまで、組織に個を奪われてきた人達をいっぱい見てきたから、「わたし、定時に帰ります」は、他人事ではなかったですね。なんてこと考えてました。

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