教育と愛国

雑誌AERAに、この映画の監督「斉加尚代」さんの特集記事を読み興味が湧いて、大阪は十三にある第七芸術劇場という渋い映画館で観てきました。どこかの団体がステッカーにしそうで、敬遠する人も多い気がする「教育と愛国」というタイトルの映画です。

近年、見えない圧力によって教科書が改訂されている様を丁寧な取材によって解き明かすドキュメンタリー。テレビでも放映されていたらしいんですが、全然知りませんでした。

良質なドキュメンタリーはNHKが独占。それも海外で作られたモノばかり。スポンサーの関係で、この手のものには、お金が付きにくく、放送されることが難しいことは想像出来ます。だから、この骨太のテーマを民間のテレビ局が制作公開したことが、妙に嬉しかったです。


映画の冒頭は、こんなシーン。
挨拶の設問
(1)おはようございます、と言いながら頭を下げる
(2)おはようございます、と言ってから頭を下げる
(3)頭を下げた後、おはようございますと言う

さて正解はどれ?
正解は(2)だそうです。
こんなことが、今の教科書には書かれているんですね。

そして道徳の教科書のとある記述部分、背景のパン屋が和菓子屋に変わったという教科書の変更。パン屋は日本生まれのものではないことが、変えられた理由だとか。
そんな話題から教科書の改訂の過程が紹介され、核心に迫っていきます。

例えば戦時中の歴史の話題、従軍慰安婦や沖縄の集団自決を例に、国が介入したとされる悲惨な歴史から、国の介入部分がバッサリと教科書から削られる「改訂」がされた等。

教科書は、教科書検定という審査に合格したものだけが使われるそうです。複数の出版社が作る教科書。どれを選択するのかは、学校や自治体に任されているようです。教科書検定の際「あるべき教科書の指針」の定義や、教科書を選択する際、出版社や学校に対し政治の思想をベースとした圧力が介入しているという、恐ろしい内容。

このドキュメンタリーの本質は、「日本人はこうあるべきだ」という理想の愛国主義思想を植え付けるべく、教科書を政治主導で書き換えているという事実を公にするということ。

歴史を都合のいいように湾曲して伝え、偏った思想へ変えていく方法は、まさにプロパガンダ。それがこの日本でも行われているんじゃないかと。そういう事実を知り、とても怖いものを感じてしまいました。

日本も、戦時中、都合の良い情報しか伝えなかったことは歴史が教えてくれます。
で、どうなったか? 
では、これからの未来、どう考えれば良いのか? それを考えることが教育のはず・・。
教育の現場で起こっているジレンマや政治の介入への不満。教育の現場では、周知のことなのかもしれないけれど、僕は知らなかったです。

こういう問題提起を促すことが、ジャーナリストの本質だと思うので、この映画が作られた意義は、とても大きいと思いました。

もちろん、語られてることが、真実かどうか?
それを見極める目を持たないといけないんですが。

常々思うんです、考えることを辞めた時点で、まわりに迎合するか、知らぬこととして済ますことしか、出来なくなる。

組織に属していると、都合のいいようにしか情報を伝えない人を、これまでたくさん見てきました。政治的な思想を軸に集まる権力者は、その思想に縋りながら都合の良い解釈のもと、思想の違う相手を攻撃する。同調する人もいて守られている感覚もあった上で、攻撃が出来るんだから、気持ちいいんだろうなとも思います。

でも、本当にそれでいいのか?

この映画は、とても重要な事を伝えてくれてる。
そんな気がします。

賛否両両論あるだろうけれど、皆に、見てほしい映画でした。
これ、中学や、高校の授業で上映することは、出来ないんでしょうか?
考える授業として、とても良い題材だと面白いと思うんだけど、これも思想教育と見なされちゃうんでしょうね。

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