過去はいつも新しく、未来はつねに懐かしい 写真家 森山大道
森山大道さんの映画です。
パリフォトに向け、1968年に発行された写真集「にっぽん劇場写真帖」を復刻。その舞台裏のドキュメンタリー映画でした。もちろん森山大道が主役なんですが、写真集復刻に情熱をかける人達のドラマでもありました。大阪は池田の出身である森山大道。生活圏が同じ箕面出身で俳優の菅田将暉のナレーション。箕面出身の僕は、親近感を感じながら鑑賞スタート。最後まで、あっというま。
この映画のハイライトは、森山大道さんの写真が、劇場のスクリーンいっぱいに映し出されることですね。モノクロの「アレ・ブレ・ボケ」の作品を、これでもかって大画面で見れ強烈なインパクトが残ります。僕は、以前から森山大道さんの写真が、よく解らなかったんです。去年「森山大道の東京」を美術館で見て、モノクロのインパクトにやられるまでは。その印象が残る中、今回の映画です。改めて、森山さん、すごいぞって。森山さんの写真は、モノクロがかっこいい。
映画のなかで、こんなことも知りました。寝室にはフランス人のニエプスの世界で初めて撮影された写真を飾っていて、モノクロの荒い写真は、まさに森山大道の原点だなと思ったこと。フィルムカメラには、全く未練がない。好きな印画紙が無くなってしまい、プリントは辞めたこと。カメラはほとんど買ったことがないこと。バーで個展を開催した際、写真を画鋲で貼り付けて展示。これがいいんだよって場面とか。友人の中平卓馬を心からリスペクトしていること。気になる場面が多過ぎて書ききれないほどの森山ワールド。
最後、海辺で「一枚撮っておこうかな」って写真を撮る場面。これも良かった。映画を通して、森山さんは、全てをちゃんと受け止める度量をもった人なんだなと感じた、目の前に現れる光景に遭遇することを、心から楽しんでる。写真を撮ってる姿は、カメラ小僧そのもの。業界ではすごい人なんだれど、ちっとも偉ぶるところがない。写真家って、写真とその人の生き様が滲み出て、世間に認められる。そんなことも教わった気がしました。
あえてダメ出しポイントを上げると、合間に流れる音楽が、大袈裟で仰々しくて場面場面のコントラストを極めるための演出なんだろうけど、時代が昭和の古臭い感じがして、好きではなかったです。
でも見終わった直後より、ジワジワと時間が経つにつれ、見て良かったなぁと思う。 そんな映画でした。