無人島のふたり
山本文緒 著
直木賞作家の山本さんが、膵臓がんと診断された2021年4月から、2021年10月に亡くなるまでの日記です。
58歳。出版することを前提に書かれたものでもあります。
小さな頃こんなこと思ってました。死ぬときは、人間の全ての機能が等しく衰退していってそれが全てゼロになった時に亡くなると。
そんなことは全くの誤りだとすぐに気がつくんだけれど、今でも、そうあって欲しいと思うことがあります。
作家である山本さんは、書いて書いて、もう書かなくてもいいんだと思ってはいても書いてしまう。そして書くことで救われていると書かれてました。
淡々と流れる最後へと続く時間の中で、山本さんはきちんと状況を受け止め、その時に感じた、たわいもない普通の感情や想いを書かれてます。蝕まれていく体調の変化と余命がそれほどないこと以外は、至って普通に。
日記から漏れ伝わる、山本さんのあったかい人柄や価値観。それに家族への愛情たっぷりな想いは、読んでるこちらにも伝わって複雑な気持ちになります。
想像通りの結末。
山本さんが書かれたものではない、亡くなられたことを知らせる最後のページ。
ほんとに亡くなったんだと、ぽっかりと穴が空いたような感覚を味わいました。
自分は、最後に何を遺せるんだろうか?
すごく大切なことを教わった気がします。
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