佐藤健寿展 奇界/世界

西宮市大谷記念美術館

怪しげなニュアンスの言葉ならば、「鬼界」「奇怪」としてしまいそうなのに「奇界」です。これ辞書にないので、世界に散らばる奇妙なモノって連想できる造語ですね。
 会場の美術館入って、左手に一部屋目、階段上がってちょうど真上に二部屋目。この二つの部屋はパネル写真とその奇界な建造物やモノの説明書きが、対に並べられ図鑑的な見せ方をしてました。アートを見たいと思ってきた僕には消化不良だったけれど、楽しそうに観ている方が多かったので、これはこれでありなんだろうと思います。パネルの写真って、安っぽく見えるので好きではないけれど、写真はどれも素敵です。それにしてもすごい物量でした。

圧巻は、3部屋目。黒のマットで額装された本気の写真に見惚れてしまいました。最初と最後に飾られていたくっきりとした水平線が綺麗な海と空の色味が、とても好き。黒バックのポートレートも実にいい。
この奇界ってテーマは、そこで暮らしている人達にとっては普通のこと。奇妙かどうかは、それを見る人との相対的な感覚でしかない。この展覧会を見た人が日常と非日常の境界線が揺らげば嬉しいって作者のコメントは、説得感を持ってドンと伝わってきました。
こんなことも考えてました。ネットも書籍も、それにこの写真もリアルなものではない。僕はリアルな世界を体感することが、感性を刺激するには一番好ましいことだと今でも信じてます。でも、この作品を見る鑑賞者は、僕を含めて作品に写るリアルな世界を、ほぼ知らない。写し取られたもので想像するしかない。でもリアルな現実を自分の目で見たとしても、そこに見えるのは、自分のフィルターを通してみる世界でしかない。日常と非日常、奇妙なものとそうでないもの。目の前で起こることも、遥か彼方でおこっていることも、結局は自分が、どう見るかってことに繋がるんだなぁと。

なんだか自分でもよくわからなくなってきたけれど、写真の持つ力って、やっぱ凄いなぁと思えた展覧会でもありました。

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