あわだつからだ 前川志織
風アートプランニング代表の泉井さんと、ご縁があってギャラリーへ伺ってみました。早く行かねばと思いながらも、なかなかタイミングが掴めず今回が初。
個展は前川志織さんの「あわだつからだ」。体の風景を描くというサブテーマ。部屋に入り、全体を見渡す。黒い・・。やばい作品? 死? 宗教画? ギュスターブモローの黒い版? 作品の説明に「パネルに綿布、墨汁、エッグテンペラ」とあります。墨汁で全体を塗り、そこから下地を削り出し人や背景を浮かび上がらせるという手法。水彩画しか描いた事がないので、どれほど大変かは解らないけれど難しそう。作品をじっくり見るとベースになる墨汁の風合いが、どの作品も一様ではなく、背景として成り立っている。全体が黒いので解りづらいけれど微妙なグラデーションがすごくいい。戦場の苦しい心の叫びを全面に出し、見ているとこちらも苦しくなる画家の香月泰男さんの「シベリアシリーズ」を連想、けれど前川さんの作品は、じっと見ていると光が灯される不思議な感覚になったことが印象に残ってます。
前川さんは、とても静かな佇まいの方。作品のタイトルも、「ここではないどこか」「自分と指切り」「泥を結ぶ」「半身」等、暗いというより作品にエッセンスを加えるウイットがあり最初に感じたネガティブな印象は、作品全体を見渡した後には、すっかりなくなっていました。体の風景を描くと作者が示したように、体が泡立つように湧き上がる人の情景を表現するには、この前川さんの作風は優れているのかもしれない。そう思い始めると噛めば噛むほど味が出てくる作品達でした。いい作品を見れたと思います。次の作品も見てみたい!!