ぼくが世の中に学んだこと 鎌田慧著
夢中で読んでしまった。
1983年に発行された骨太の著者の経験を綴ったルポ。町工場の過酷で非人道的な低賃金の労働体験。昔はねと一括りで、語るのは、うまくないけれど、「出稼ぎ」という言葉が一般的だった頃の昭和の時代の話し。劣悪な労働環境は大企業のトヨタでもそうだったみたい。使い捨て?家畜のような待遇。使う側と使われる側というわかりやすい図式の中で生きている人達の事が、著者の実体験を通して描かれてます。活字でこれだけの描写をする著者のライターとしての技量には驚くしかないけれど、その内容も実に興味深い。僕は、この本の中にあるような過酷な仕事をした経験がない。僕は単純な作業の繰り返しが昔からダメで、ほぼ使い物にならないと思ってます。それを強要され、せざる得ない状況になったとしたらどうだろうか?と想像しながら読んでいたのでとても疲れました。ただ会社に働き精神的な苦痛で去った仲間をいっぱい知っています。精神的な苦痛のレベルは、時代や環境、それに人それぞれの感覚で、変わるんだろうと思う。そもそも人と比べてどうかという議論すら間違っているとも思う。
この本で著者が伝えたかったことは、最後の最後に書かれてます。
「この本の読者の中から、どんな苦しい時でも、その苦しみを仲間と分かち合い、明るく生きている多くの人がいることを知り、自由におおらかに生きていく年若い人たちが、ひとりでも、ふたりでも出てくれれば、著者としての本望です」
心に刺さった文 (引用)
・どんなところにいっても、ものごとをしっかり考えている人がいる。世の中のことをよく考え、自分を犠牲にしても人々のために働いている。
・こころの底からのギリギリの言葉に対しては、高学歴や権力の言葉は役に立たない。
・戦争中でも、命をかけて戦争に反対しつづけた人たちがいた
・さまざまな場所で、自由に、つまり人を支配したり、人に強制したり、あるいは人から強制されたり、自分の意見を言わなかったり、あきらめてしまったり、そんな生き方でない生き方をしている人がいる。
僕は、学生の頃「太平洋ひとりぼっち」を読んで、海の上で仕事をしたいと思い航海士になった。学生の頃に、この本を読んでいたら、どうだろう?サラリーマンの道は選択肢からバッサリ外していただろうなと、想像します。
若い人に是非是非読んで考えて欲しいと思います。