言葉が写真を変える

 システムエンジニアやプログラマーとしてソフトウェアの開発をしているエンジニアは、どちらかというとユーザビリティが苦手です。出来ることと使いやすいことが違うことを理解出来ていない技術者は多いと思います。手順通りにやれば出来る。手順書を見ないと使えない。使いやすさは、手順通りに手順書を使わずに自然とやれるデザインにすること。
例えば駅の券売機、海外に行くと戸惑いませんか? 日本の券売機を知ってると余計に戸惑います。また券売機の概念や切符の概念を知らないと、なにも出来ない。何かを知ってる前提でデザインされたものは、その何かを知らない状態を想像してデザインされていません。
ユーザビリティの高い使いやすいデザインを作るにはどうしたら良いのか? とある大学教授に知り合いがいて、開発したシステムを批評してもらったことがあります。学生がすでに数千万で販売しているシステムの批評をする。批評された結果をレポートとして受け取ったわけですが、面白かったですね。肯定的な意見もあれば、否定的な意見もある。
 その批評を見て、改善策を提案してもらうことを決め、お願いしてみました。
最初に学生達とやったことは、とにかく言葉で定義していく作業でした。会社の思想やら製品のイメージ、コンセプト、機能の意味、ありとあらゆる事を的確な言葉に置き換える作業を時間をかけてやりました。大変でしたね。我々が日常的に使用している言葉が伝わらない。業界の用語ではなく、一般に使われている用語に落とし込むことの難しさを痛感しました。
そうやって絞り出した言葉を頼りに、デザインの方向性を固める作業が次のステップ。
その時にふと思ったんです。言葉があるものは表現出来るけれど、言葉がないものは、その表現すら出来ないということを。英語にはあるけれど、日本語には無い。その逆も。国ごとの文化は言葉として定着しています。その国の考え方や思想を反映している。凄い発見をした気になりました。言葉って面白いぞと。ちゃんと学問として学べばその国の人柄や文化まで解るんですから。
写真作品を作る時に重要なのは、テーマを見つけ、絞る。そのテーマは自分の中で明確に言葉として定義され、それを軸にして作品を作ること。言葉を選ぶことは、写真の中で重要な要素だといろんな人から言われてきました。その遠りだと思います。だから言葉のボキャブラリーを増やす努力は必要なんです。写真の撮影は出来て当たり前の時代。言葉によって写真作品を語り、伝えること、写真家としてとても重要なスキルなんだろうと思ってます。ただ綺麗と云ってたモノは、どう綺麗なのかを説明できること。
それが難しいことを毎日、実感しているんですが。写真家になるためには大事なステップですね。

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